内視鏡
先進医療 大腸ESD
2012年4月より、2cm〜5cmの病変に限り大腸ESDは保険収載されました。同時に大腸ESDの先進医療制度は廃止となりました。
真木病院 消化器内科・内視鏡内科 和田正浩部長は、薄い腸管壁などの解剖学的理由により手技的に高度な技術が要求される大腸腫瘍に対する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)において、2010年10月1日厚生労働省より先進医療として承認され、真木病院が群馬県で最初の認定施設となりました。
ESDとは
ESDとは近年開発・発展してきた治療法で、従来は外科手術が必要であった大型の病変や内視鏡切除が困難な部位に存在する病変に対して、専用の電気メスを用い少しずつ病変を剥離していくことで、高率に病変を一括に切除することができ、高い根治が望める新しい内視鏡治療です。
ESDによる内視鏡手術は、2006年4月早期胃癌を対象に、また、2008年4月には早期食道癌を対象に保険適応となりました。しかし、大腸腫瘍(癌・腺腫)に対するESDは、高度な技術が必要であることから保険診療の対象外でしたが、2009年7月から先進医療としての治療が承認されています。
先進医療の内容
先進医療制度は、保険適応外の新規の治療技術に対し保険診療との併用を認めることで、患者様の自己負担額を軽減するための制度です。一定の技術的・施設的な要件を満たした医療機関からの申請に基づき厚生労働省が認可を行います。
先進医療は承認を受けた施設でのみ治療を受けることができ、医療行為のうち、先進医療該当分の費用は患者様の自己負担となりますが、その他の診察、投薬、入院費等は保険診療の適応となります。
真木病院で大腸ESDと外科手術による治療を受けた場合の比較では、大腸ESDの先進医療に係る費用が183,400円、入院治療費が約19万円で、医療費の総額は約37万円となり、保険診療の負担が3割の場合、費用は約24万円になります。外科手術では医療費の総額は約100万円で、保険診療の負担が3割の場合、費用は約30万円となります。(保険診療負担金は高額療養費の対象となります。)
大腸ESDのメリット
大腸ESDでは、従来の内視鏡切除法では治療困難で、手術により治療されていた病変の内視鏡治療が高率に可能となります。大腸ESDでは入院期間は6日程度ですが、外科手術では約2~3週間の入院が必要になります。大腸ESDと外科手術の比較では、大腸ESDでは患者様の肉体的・精神的負担の軽減、入院期間の大幅な短縮、医療費の軽減などのメリットがあります。
当院における大腸ESDの治療成績(2017年12月までの837病変)
一括切除率 | 98.9%(828/837) | |
断端陰性一括切除率 | 98.6%(825/837) | |
偶発症発生率(出血) | 1.1%(9/837) | |
偶発症発生率(穿孔) | 0%(0/837) | |
平均治療時間 | 46.1分 |
大腸ESDは非常に高い内視鏡治療技術が必要とされますが、幸い当院では大きな偶発症が発生せず、ESDの最大の目的である一括切除は高い確率で達成できています。
しかし、大変残念ですが一括切除できなかった患者様もおります。一括切除出来なかった9病変では、7病変で治療困難のため中止となり、2病変で治療困難となりEMR法による分割切除へ変更しています。また、粘膜下層深部へ癌が浸潤した3病変では、病理診断で深部断端陽性となりました。
内視鏡治療の精度
内視鏡治療で癌などの病気を治療する場合には、病気全体を完全に切除し体の外に出す必要があります。その際、重要なことは、病気の広がりを正確に診断する能力と、安全に切除する能力です。この2つの能力のうちどちらかが劣っていると、内視鏡治療の根治性が低下する恐れがあります。内視鏡治療の根治性を高めるためには、診断能力と治療技術の両者が備わっている必要があります。
当院では内視鏡治療前に、NBI等を併用した拡大内視鏡検査や超音波内視鏡検査を駆使し精密な診断を行い、内視鏡治療による根治が見込まれたことを確認した後、内視鏡治療を提案させて頂いております。2017年12月までに当院でESDにより治療した1385病変(胃・大腸・食道・十二指腸)では1375病変(99.3%)で一括切除できました(一括切除が不能であった10病変では、8病変は切除困難のため中止、2病変はEMR法による分割切除に変更)。一括切除できた1375病変では、腫瘍の横方向の取り残し(側方断端陽性率)は0.07%(1/1375)であり非常に安定した治療成績でした。
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